この「もこもこ日記」ですが、実は時折、同業である他の鍼灸師の先生方からも「ブログ読んでるよ!」とお声をいただくことがあります。
(もしかすると『もう少し専門的でマシなことを書け〜!』という愛ある叱咤激励かもしれません笑)
そこで今回は、少しだけ「鍼灸師らしく」、臨床の根幹にある技術とお話をしてみたいと思います。うまく書けるか分かりませんが、お付き合いいただければ幸いです!
鍼治療の基本「補法(ほほう)」と「瀉法(しゃほう)」
東洋医学の鍼治療には、大きく分けて「補法(ほほう)」と「瀉法(しゃほう)」という2つのアプローチが存在します。
補法(おぎなう): 体内のエネルギー(精気)が不足している時に、それを補い充填する方法。
瀉法(捨てる・移す): 体内に停滞している余分な熱、冷えなどの悪影響(邪気)を体外へ追い出す方法。
私たちは患者さんのお身体を診察する際、手首の脈を診る「脈診」や、お腹の状態を確かめる「腹診」、ツボの細かな反応を丁寧に分析しながら、今どちらの施術が必要なのかを正確に判断していきます。
もしこの判断を間違えてしまうと、体調を良くするどころか、施術前よりもだるくなってしまうことさえあります。
サイダーのフタを開けると「精気」が抜けていく?
さらに繊細なのが、見立てが合っていたとしても「鍼の触れ方・差し方ひとつで、狙いとは逆の効果になってしまう」という点です。
「エネルギーを補おう(補法)」としていても、手法によっては患者さんの精気が外へ漏れ出てしまう(瀉法になってしまう)ことがあるのです。
分かりやすく例えるなら、「皮膚に鍼をアプローチすることは、サイダーのフタを開けるようなもの」です。
フタを開けると、炭酸がシュワ〜ッと外に吹き出していきますよね。
あの炭酸こそが、人間でいう「精気(エネルギー)」です。
元気が満ち溢れていて、自分で次々と炭酸(エネルギー)を作り出せるお身体なら、少し気が抜けても問題ありません。
ですが、不妊や慢性の不調で精気がすっかり弱っている患者様にそんな施術をしてしまうと、まるで「気が抜けたサイダー」のように、身体からパワーが失われてぐったり動けなくなってしまうのです。
私自身、たまに他院で鍼を打ってもらう機会があるのですが、「あ、この触れ方は気がどんどん漏れていってしまうな……」と感じることがあります。打つ側が「気(巡り)」よりも「単なるツボの場所」だけに意識が向いていると、起きやすい現象です。
刺さない鍼なら「気が漏れない」わけではない
ここで、同業の鍼灸師さんの中には「刺さない鍼(てい鍼)なら皮膚を破らないから、気が漏れる心配はないでしょう?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実は刺さない鍼であっても気は漏れます。
東洋医学において、気には体の内側を巡る「営気(えいき)」と、体のバリア機能を担う外側の「衛気(えき)」があります。
刺さない鍼は皮膚の表面(肉体)は破りませんが、技術や意識が伴っていないと、外側のバリアである「衛気」を破ってしまうのです。
「刺さないから安心」と油断して衛気のコントロールを怠ると、エネルギーを補っているつもりが、知らず知らずのうちに“気が抜けたサイダー”を作り出してしまうことになりかねません。
こも池鍼灸院が目指す「気の利いた身体づくり」
だからこそ当院では、皮膚の内側だけでなく、お身体を包む「衛気」の境界線にまで細心の注意を払いながら、刺さない鍼とお灸をすえています。
今、お身体のどこに気が足りていないのか(補うべきか)
どこに滞りや余分な緊張があるのか(逃がすべきか)
手首の脈やお腹の声にじっと耳を傾け、補法と瀉法を絶妙な塩梅で使い分ける。
ただツボに鍼を当てるのではなく、大切なエネルギーを体内へと巡らせていく。
特に、新しい命を授かる妊活中の身体には、とても大切なことだと考えています。
【院情報】
奈良県生駒市の不妊鍼灸・体質改善
〒630-0251
奈良県生駒市谷田町882-2 司ビル1階中央号室
※当院で行う「てい鍼(刺さない鍼)」は、脈診や腹診に基づき繊細な気血のコントロールを行う東洋医学的施術です。お身体のデリケートな変化に合わせたオーダーメイドの全身調整を行っております。