当院(こも池鍼灸院)には、患者さんに着ていただく施術着やよもぎ蒸し用マントを洗うための洗濯機が置いてあります。
この洗濯機、今ではすっかり珍しくなった「二層式洗濯機」なんです。
二層式は何もかもがアナログ。平成や令和生まれの方にはピンと来ないかもしれませんが、黒電話と同じくらい「ザ・昭和」な趣があります。
水道の蛇口を回して自分で水を溜め、指定の水位まできたら手動で蛇口を閉める。そして洗濯時間を好みの分にダイヤルを「くるり」と回して合わせます。
全自動ではないので、洗濯時間を「5分25秒」みたいに細かく設定することもできます(やらないけど…)、洗濯中に蓋を開けても自動で止まることなく、水がくるくるくると回る姿をそのまま見ることだってできます。
「このくるくる回る水の渦巻きは、南半球に行ったら逆回転になるのかな?」なんて一瞬考えつつ、「いやいや、これは電気の力で強制的に回しているから関係ないか」と、少しだけ文明の利器を感じさせてくれるそんな洗濯機です。
二層式洗濯機が「くるくるくる」と回っている間に、私はその日の診療を終えた患者さんのカルテを見直すのが日課になっています。
当院には、本当にさまざまな悩みや望みを抱えた方が足を運んでくださっています。
・「なかなか妊娠しないので、身体を根底から良くして授かりたい」と通われている方
・「気分の落ち込みがひどく、どうしてもやる気が出ない状態を抜け出したい」と来られた方
・「大切な採卵日までに、少しでも卵巣や子宮の環境を整えたい」と来られた方
・「いよいよ臨月を迎えたので、少しでも安産になるよう体調を整えたい」と来られた方
・「つわりが辛くてたまらないので、少しでも軽くしてほしい」と来られた方
・「妊娠判定で陽性が出たけれど、まだまだ不安でいっぱい」と通われている方
カルテに記されたお一人おひとりの身体の状態、鍼を施したツボ、お灸を据えた場所……それらを読み返していると、現状から「一歩先へ進みたい」と願う患者さんの心模様が、浮かび上がってきます。
妊活にしても、自律神経や体調の不調にしても、思い通りにいかない日々はまるで「いばらの道」を歩んでいるように感じられるかもしれません。
けれど、カルテをめくりながら私はいつも思います。
「今は辛い試練の途中だったとしても、いつか想いがパッと花咲く未来が必ずやってくる。そして後から『あの頃は本当に大変だったけれど、頑張って良かった』と、笑顔で振り返ってもらえる日がくるようにしたい」
「この患者さんのつらさを和らげ、未来につなげるために、もっと良い診方はないだろうか?」
いつの間にか「洗い」が終わって静かになった洗濯機の横で、私の思考は「もうひとひねり」とくるくるくると回転させています。
こも池鍼灸院